氷雪、ニシンの酢漬けとスタンディングオベーション

極寒の地から無事に帰ってきましたー。

出発の日、朝めざめたら雪。これは早めに出ないと、と思っていたら案の定、電車が遅れて冷や汗かきました。しかも朝のラッシュ時、急行の運行はなし、トランクと衣装入り手荷物を持った私は、一本待ってやっと渋谷へ。成田エクスプレスは順調→両替。スウェーデンは、ユーロでなく、スウエーデンクローネ。50クローネ札には、楽譜が載っていて、裏を返すと、古楽器のようなギターのイラストが、音階の楽譜との対照表のようになっている。お札に楽譜を載せるなんて、なんて面白い国なんでしょう。と少し嬉しくなりながらの出発でした。

直行便はなく、フィンランド航空にて10時間のフライト後、ノルウェーのヘルシンキ国際空港で乗り換え。これがハブ空港なのね、とうなずく凄〜く大きな空港。ノルウェーといえば、かもめ食堂、ムーミンの国ですね。1時間のフライトで、とうとうストックホルム国際空港に到着しました〜〜〜。気温は摂氏マイナス12度、これまで体験したことのない寒さ。外気にあたると、10分ほど居るだけで、みるみる体が冷えてくる。自分の吐く息がものすご〜く白くて面白い!!

空港には、私を呼んでくれた、キャッスルヴアニアコンサートのディレクター、デビットさんと、通訳のサイモンさん。早速、楽譜のお札のことを尋ねると、スウェーデン人の吟遊詩人なんだそうです。とにかくアルコール好きで、酒に関する歌をたくさんつくった人らしい。

さて、ホテル到着後、すぐに着物に着替えて、取材会場へ。少人数のこじんまりした会だったが、着物は喜んで貰えた様子。

その後、プロデューサーのエリックさんとレストランで食事して、1日目は終了。この時点でもうぐったり、、、。コンサートホールは、私が泊まった部屋から広場を挟んで真向かいにそびえたっている。コンサートの告知の垂れ幕もホールの壁に下がっている。ここで弾くのか私はー、時差ぼけと疲れで実感が湧かない。とにかく就寝。

2日めの朝。今日、もう本番だ。楽屋には、グランドピアノと、壁には、数々のマエストロたちのサイン入りの写真がかかっている。なんだか申し訳ない。落ち着かずにホールの2回席をうろうろしていたら、指揮者のグレン先生が私をみつけて、ご挨拶。演奏曲目についてカタコト英語で打ち合わせ。午後からのリハーサルで初めてオーケストラの団員の皆様に紹介して頂きました。プロフェッショナルなオケではなく、高校や大学などの学生さんを中心としたオーケストラ。リハーサルは、どぎまぎしながら終了。本番、どうぞよろしくお願いします。

2006年、思えば勇気のいることだったなぁ。初めて演奏したのが、ライプチヒ、ケヴァントハウスでの木彫パルティータ。心臓がとびでそうなくらい、どきどきしたのを昨日のことのように思い出した。ずっこけそうになりながら、必死に演奏したっけ。

、、、ぼんやりしているうちに、プログラムは次々と進み、あっという間に私の出番が迫ってきた。名前を呼ばれて舞台へ出て行くと、割れんばかりの拍手、拍手、拍手。わぁー、どうしよう、もう圧倒されてしまって心臓がどきどきし、足はすくみ、すっかり舞い上がった私は、途中でいつもと違う、木彫パルティータを弾いてしまいました。これはいけない、と必死になって、いつものフレーズに持ってゆき、演奏終了。また割れんばかりの拍手、拍手、拍手、、、。もうほんとにすみません、申し訳ないです、ファンの皆様ありがとうー!!!来て良かったです。私のつたない演奏にこんなに拍手を頂いて、今日の演奏は「木彫パルティータ〜ストックホルムバージョン〜」と名付けよう。休憩時間、舞台裏で、指揮者のグレン先生はにっこり笑って、「ハイ、ミチル!!君、違うフレーズ弾いたでしょ!?大丈夫だよ、誰もわかりゃしないさ。はっ、はっ、はっ。」と励まして下さいました。いや、わかる人はわかると思うんだけどなぁ(汗)、、、。休憩の後、2部がはじまり、「パール舞踏曲」の演奏。今度はしっかり演奏しなければ、、、はるばる日本からやってきたのだから、と自己叱咤激励。「パール舞踏曲」は、緊張はしたが、この大きな空間の雰囲気にも慣れてきたのか落ちついて演奏できました。演奏終了。立ち上がってお辞儀をすると、何と、スタンディングオベーションと拍手の嵐。みんなほんとうにありがとうー、この拍手は私だけでなく、〜月下の夜想曲〜の制作にかかわったすべての人、先輩コンポーザー、悪魔城シリーズの制作にかかわったすべての人に頂いているんだ、と思いました。こうなったら、もう北極でも南極でも赤道直下でも、呼ばれたら、どこでも演奏しに行こうではありませんか。

恐るべし、日本のゲーム、恐るべし、月下の夜想曲。

さて、その後も、コンサートは順調に進み、私がかつてゲームのために作曲した音楽が、こんなに素敵なコンサートホールで、満員のオーディエンスの前で、ストックホルムの若い優秀な演奏家たちによって、次々と演奏されました。あの頃作曲した音楽が、15年後にストックホルムでこんなことになるなんて、一体誰が想像できたでしょうか!!

アンコールは「さまよえる魂」。これもチェンバロで参加させて頂きました。こうしてすべてのプログラムは滞りなく進み、コンサートは熱狂と興奮のうちに終了したのです。

ずぐにロビーに出て、サインと握手会。リトアニアから来て下さったファンの方、かわいいおみやげありがとう。「お腹にサインしてもらっても良い?」と言って、お腹にサインさせて頂いたファンの方。来て下さったみなさん、ほんとうにありがとうございました。感謝の気持ちで一杯です。私を呼んで下さったデビッドさん、プロデューサのエリックさん、重ねて御礼申し上げます。お二人とも、優秀な演奏家で、デビッドさんは、司会のほかに、ドラキュラ伯爵のコスプレ、そして超絶技巧のピアノ演奏、エリックさんは、パイプオルガンの荘厳な演奏とシモン・ベルモンドのコスプレ、とてもお似合いでした(笑)とっても楽しかった。

一夜明けて帰国の日、朝食バイキング(スウェーデンはバイキング料理発祥の国)で鱈の酢酢け(2006年にプラハで初めて食べてから私の大好物)をたらふく頂きました。マスタード味、トマトソース味、スウィートピクルス味など、バリエーションもたくさんあり、どれも美味しい〜のです。外は、またまた粉雪が舞い、到着した日よりもさらに寒い。フロントでタクシーを呼んでもらわなくちゃ〜、などと思いながら、チェックアウトをするためにロビーに出たら、何とエリックと、デビッドが、見送りに来てくれていた。なぜ私が帰る時間がわかったのだろう?しばらく待っていてくれていたのだろうか。タクシーは既に呼んで下さったという。到着したら連絡が来るから外は寒いので、ここで待てということらしい。お心遣いありがとう(涙)しばしの別れを惜しみ、カタコト英語で御礼を伝え合う。たった2日間の滞在なのに、昔からの友人のようだ、、、。「音楽は国境を越える。」なんて使い古しの言葉は使いたくないが、やはり音楽は国境を越え、ゲームも国境を越えるのだなぁ、、、としみじみと実感しました。

それでは今日は、この辺で、、、。

ホテルの窓から見たホール正面

ホテルの窓から見たホール正面

ホールの垂れ幕

ホールの垂れ幕

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