Archive for 6月, 2009

記憶喪失学/菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール

土曜日, 6月 6th, 2009

私の師匠、菊地成孔が主宰するグループのひとつである、ぺぺ・トルメント・アスカラールのコンサートに行ってきた。弦楽四重奏+ピアノ+ハープ+バンドネオン+ベース+2パーカッション+サキソフォン、というエキゾチックな編成のこのオーケストラ。もう5年ほど前になるだろうか、がぼさんに誘われて、ペペのコンサートに訪れ、初めてその演奏を耳にした私は、思いがけず大きな衝撃を受けてしまった。東京に、こんなすごいことに挑戦している人たちがいる、ということにまずは驚きと尊敬の気持ちが沸き上がり、おそるおそるその世界に足を踏み入れ、すっかりそのサウンドのとりこになった私がいた。南米音楽とポリリズム、そしてムード歌謡と現代音楽が一緒になり、見事に調和したこのサウンドを何と呼べばよいのか。2枚目のアルバム「記憶喪失学」には〜映画に呪われた映画音楽〜、とジャケットの帯に書いてある。

昨夜のグローブ座のコンサートは、いつにも増して熱狂と、甘美といくつものリズムが交叉し、頭の中をぐるぐると渦巻き、みぞおちのあたりがワクワクし、これまで知らなかった未知の世界に誘われていた。変拍子とポリリズム、この2つの要素を特徴的に配置した音楽が、匂いたつようなハープと哀愁を帯びたバンドネオンの音色に彩られて、あるときは真綿のように、あるときはこれでもかこれでもかと、波のように押し寄せる。

いつも不思議に思うことがある。音楽は、あるとき、聴くものに微笑んだり、冷たく突き放したり、無視したり、やさしく包みこんだり、まるで恋人に接しているように感じることがある。それは、私のこころの問題なのだろうか、聴く人の耳によるものなのだろうか。いろいろと思うことの多いコンサートであった。とはいえ、やはり、襟を正して、正直にならなければならない、ということは、いつも菊地先生の音楽に接していて感じることである。

それでは今日は、この辺で。