Archive for 11月, 2010

小曽根真ショパンを弾く

月曜日, 11月 8th, 2010

小曽根真さんのコンサートに行って来た。東京オペラハウスの残響の多いホール全体に響きわたる、次々と紡ぎ出される音の美しさに完全に圧倒されてしまった。良い演奏会だったなぁ。こういう場にライブで立ち会えたことをとても幸せに思う。小曽根さんの演奏との出会いは、まだ私が学生だった頃、小曽根さんがバークリーの学内演奏会でトロンボーン奏者とのデュオでの演奏がレコードになっていたのものを聞いたのが初めてだった。

今は亡き、私の作曲の恩師、兼田先生が「こいつうまいよ。」といって聴かせてくれたのだ。その頃、ジャズピアノといえば、オスカー・ピーターソンくらいしか知らなかったのだが、彼らの演奏は、妙に印象に残る楽しげな演奏で、カセットテープにダビングして何回も何回も聴いた。3拍子のジャズワルツで、小曽根さんの紡ぎ出す旋律と、トロンボーンの掛け合いが軽快な曲は今でも歌えるほどよく覚えている。

2010年の小曽根さんもやはり楽しそうにピアノに向い、私たちを楽しませてくれた。気さくな人柄だが人生をかけて音楽を追求している様子が音を通して伝わって来た。「ショパンは怒っているだろうな。」と謙遜してらしたが、ショパンは喜んでいると思います。確実に、、、。私がショパンなら、こんなふうに演奏してもらって嬉しくないはずがないじゃないですか。

さて、コンサートの最後の演目、ノクターンは、これまで聴いたどのノクターンよりも綺麗で繊細で、もう少しで落涙するほど何かが伝わってきた。ここ数年で小曽根さんの中で何か変化があったのに違いない、と確信しているところなのだが。

バークリー卒のジャズピアニストといえば、大西順子さん、上原ひろみさん、が記憶に新しいところだ。大西順子さんのピアノを聴いたときも衝撃だった。何か孤高の芸術家を思わせるその雰囲気と厳しさに圧倒されたのだ。ニューヨークで切磋琢磨する現代アートのモノクロ写真家を思わせる。最近、活動は控えめなようだが、また彼女の骨太でごりごりした哲学的な演奏を聴きたい。

上原ひろみさんは、ジャズピアニストというカテゴリーに閉じ込めておくには、その溢れ出す楽想が収まりきらないほどの自由奔放なピアニスト。彼女の音色の美しさもまた、清らかな心をそのまま鏡に映した様。おちゃめなところも魅力で、いくつになってもその良さは失われないだろう。

東京オペラシティ大ホール

東京オペラシティ大ホール

それでは今日はこの辺で。