読書の秋-五木寛之著-運命の足音

 

 

 

 

 

 

五木寛之著「運命の足音」

 

 

 

 

本の整理をしていたら、ふと目にとまった

 

 

五木寛之著「運命の足音」です。

 

 

2002年に出版されたこの本は、本の帯に

 

 

“衝撃のの告白的人生録”、とあるように、戦後57年を

 

 

経ても、胸に封印して語り得なかった悲痛な記憶を

 

 

驚愕の真実を、自伝的なエッセイとして語ったものです。

 

 

ある日、見知らぬ女性から送られてきた‘1枚の写真’

 

 

それは、終戦後亡くした母の写真でした。

 

 

前にも読んだことがあるかなぁ、と思いつつ、

 

 

母と、その母の死にまつわる暗い思い出が、

 

 

ベテラン作家の筆で書かれているので、

 

 

ついつい引き込まれて、最後まで読んだのです。

 

 

〜57年目の夏に〜

 

 

〜運命の足音が聞こえる〜

 

 

〜新しい明日はどこにあるのか〜

 

 

〜命あるものへの共感から〜

 

 

〜運命の共同体としての家族〜

 

 

大きく5章に分かれているこの随筆集、とくに

 

 

冒頭の〜57年目の夏に〜、で書かれている

 

 

「一枚の写真」、「許せない歌」、「遠景の中の父」

 

 

「地獄はどこにあるのか」は、読み進むうちに

 

 

五木さんの、父、母にまつわる終戦時にまつわる

 

 

辛い思い出、否、辛いなんてものでなはい

 

 

ご自身の地獄を正面から語り始める、その圧倒的な

 

 

文章に、読むのをやめられなくなったのです。

 

 

五木寛之さんは、88歳で、今もご健在です。

 

 

亡くなった私の父と同じ昭和7年生まれ。

 

 

さらに私の母と同じく、朝鮮半島からの

 

 

引き揚げ組です。

 

 

そんなことから、一体、どんな感じの人だろうと、

 

 

検索してみると、暗い文体とは裏腹に、にっこり微笑む

 

 

ロマンスグレーのダンディな人で、若い時のお仕事は

 

 

作家の傍、仲間たちと楽しげな企画のイベントや、

 

 

作詞家やミュージカルの脚本なども手がけ、

 

 

テレビなどにもたくさん出演されていたようです。

 

 

「大河の一滴」のベストセラー作家さんだな、

 

 

ということは知っていましたが、両親にまつわる

 

 

こんなに暗い影を抱えたまま、生きてこられていたとは、

 

 

驚きました。

 

 

五木さんと父が生まれた、昭和7年(1932年)は、

 

 

現在と同じ、時代が大きく変化している時でした。

 

 

1929年の世界大恐慌を受けて、日本でも経済が悪化

 

 

陸軍将校のクーデターが相次ぎ、満州事変や日中戦争、

 

 

第二次世界大戦へと突入してゆく、その始まりの頃です。

 

 

のちに仏教の研究もされて「親鸞」上・下も執筆

 

 

されています。

 

 

五木寛之さんをはじめとする、この年代を生き抜いた

 

 

皆さまが、この戦争がどういう風に起こったのか、

 

 

(誰が何のために起こしたのか)

 

 

やっと明るみに出てきた、ほんとうのことを知ったら、

 

 

どのように感じるのか、何を思われるのか。

 

 

ふと想像してしまう、秋の日々です。

 

 

 

それでは今日は、この辺で。

 

 

いつもお読みいただきまして、

 

 

どうもありがとうございます。

 

 

 

 

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